土地の相続登記義務化が検討されている ~ 所有者不明の土地が生まれた背景 ~

2017年12月29日の日本経済新聞「土地相続 登記を義務化」の記事によると、政府は次のようなことを検討しているようです。

現在は任意となっている相続登記の義務化や、土地所有権の放棄の可否などを協議し、具体策を検討する。

なぜ具体策を検討しなければならないのか、とお感じの方もたくさんいらっしゃると思います。今回は、政府が相続登記の義務化を検討するに至った要因について、所有者不明の土地が生まれた背景を考えながら、深読みしてみたいと思います。

所有者不明の土地が生まれたのは、戦後の「均等相続」から

まずは相続の現状を知ることが必要です。

そもそも相続の登記を行なっていなければ、土地の所有者が誰であるかわかりませんが、なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか?

これは私の推測にすぎませんが、戦前は相続の登記が必要なかったというのが一つの理由と思われます。

戦前でも相続の登記自体は存在していたはずです。しかし、当時の相続の形態は「家督相続」でした。。

「家督相続」の場合、相続する人は、多くの場合、長男と決まっていました。家の人たちも近隣の人たちも、誰が相続したのかは明らかだったと考えられます。また、土地境界線についても、近隣の人たちと間で暗黙の了解でなんとかなってきたので、相続の登記をするまでもなかったのではないかと推測されます。

戦後になると、民法では「均等相続」になりました。

長男は地元に残り、その他の兄弟の多くが地元を離れ、都会で仕事をするようになった家が増えたと思います。そのような状態で相続が生じ、引き継ぎが行われたとします。

引き継いだ1世代目は、兄弟姉妹なので、少なからず交流があると考えられます。しかし、2世代後に引き継がれると、家族間の交流も少なくなり、もう誰が相続したのかわからなくなっていても不思議ではありません。

極端な例ですが、相続登記が行われていなかったので、調べてみたら、土地所有者の相続人が200人になっていたという話も聞いたことがあります。

土地が所有者不明の状態になるのは、固定資産税の免税が関係

さて、ここで日本における所有者不明の土地は、どれくらいあると思いますか?それらの土地を合わせた面積がどのくらいになるか、次の3つの中から想像してみてください。

(1)千代田区の面積
(2)香川県の面積
(3)九州の面積

答えは、「(3)九州の面積」となります。実際には、九州の面積よりも広いと言われていますが、想像以上に広大な土地が所有者不明になっていると感じたのではないでしょうか?

ここで、私は一つ疑問に思っていたことがあります。

確かに、相続登記は義務ではないので、行う必要はありません。でも、土地には、固定資産税がかかるはずです。固定資産税を支払っている人がいるはずだから、所有者不明の土地はありえないのでは?と不思議に思っていました。

ここからの話は私の推測でしかありませんので、あらかじめご了承ください。

固定資産税には、免税点というものが存在しています。

免税点未満であれば、固定資産税を課税されることはありません。具体的には免税点が次の金額のような場合、固定資産税を支払う必要がなくなります。

  • 土地:30万円未満
  • 建物:20万円未満

土地の固定資産税を支払っている人にしてみたら、固定資産税を支払うのは当たり前のことです。しかし、長年に渡って免税されている人にしてみたら、土地の固定資産税を支払うこと自体、当たり前ではありませんし、もしかしたら土地に固定資産税がかかることすらも知らないかもしれません。

その結果、相続登記が行われず、固定資産税が免税となっている土地が発生し、所有者不明の土地になる可能性が出てくるわけです。

今後、さらに所有者不明の土地が増加することが考えられます。そのような土地が九州の面積以上に広がることを懸念し、政府が土地の相続登記の検討に至ったのではないでしょうか。

平成30年年度税制改正大綱に「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」というものが盛りこまれましたのも、上記のことが関係していると思われます。ご興味ある方は、ぜひ確認してみてください。

株式会社ディメーテル
代表取締役 岡田文徳

岡田 文徳 プロフィール

大家のための資産承継コーディネーター/株式会社ディメーテル 代表取締役社長/サブリースオーナー会 副会長/宅地建物取引士/家族信託コーディネーター®/J-REC公認 不動産コンサルタント/J-REC公認 相続コンサルタント/

J-REC全国事例研究会、東京大家塾、千葉大家倶楽部などで講演多数。また「家族信託実務ガイド」や「家主と地主」においてのインタビュー、さらにABC朝日放送に出演。NPO法人日本住宅性能検査協会にてコラム連載中