福嶋浩彦氏からメッセージ


福嶋浩彦氏 (前消費者庁長官、中央学院大学教授)

安全で安心な質の高い市場を創ることは、消費者の利益のためにも、産業の健全な発展のためにも、とても大切なことです。

こうした市場を実現するには、法的規制を含めた行政による適切な誘導も必要ですが、当然、社会的責任を自覚した企業の自主的な努力が大前提となります。そして同時に、消費者が的確に選択する力を持ち、実際にその選択を支障なく行えることが重要です。

消費者が何も考えずに生活していても、行政が悪質業者や欠陥商品を全て追い払ってくれる。万一被害が発生しても、黙って座っていれば行政が救済してくれる。こんな社会は作りたくても作れません。消費者一人一人が積極的に情報を集め、しっかりと自分で確かめ、よく考えて判断する。こうした消費者力が不可欠です。

しかし一方、消費者と事業者とでは、情報の質や量、交渉力等に大きな格差があります。ですから、「安全の確保」「必要な情報の提供」「合理的な選択の機会の確保」など、消費者の権利が社会的にしっかりと保障されなければなりません。社会全体で消費者力を高めていくことが大切です。

NPO法人日本住宅性能検査協会は、住宅産業分野で企業と消費者の懸け橋となって、地域に密着しながら消費者のサポートを行い、消費者力を高める役割を担っておられます。

専門的・客観的な第三者の視点で消費者のために住宅性能を検査したり、市民講座を通して「無料点検商法」などの被害を未然に防ぐ知識を広げたり、分かりにくい住宅業者の情報を消費者に分かりやすい形で発信したり、まさに消費者の選択に必要な情報を提供する活動をされています。

さらに、日本不動産仲裁機構を通して、ADRにも取り組まれています。様々な分野に信頼できる民間ADRを育てていくことは、消費者のための重要な基盤整備であると考えます。

消費者の行動は、持続可能な社会を実現していくうえでも決定的に重要な要素です。消費者は単に保護される存在ではなく、より良い社会を創造していく主体だと言えます。

NPO法人日本住宅性能検査協会が、消費者にとって心強い民間の第三者機関として、住宅産業の健全な発展をめざし、一層充実した活動を展開されますことを心から願っています。

(了)