相続税対策の賃貸アパート、地銀の収益源に?

昨年、相続税対策で賃貸アパートを建てたオーナーの方は、必要以上の費用を支払っているかもしれない。

2015年、相続税制の改正により、課税対象が拡大、新たに相続税を払う必要がある層が含まれることとなった。その対策として、賃貸アパートの建設が資産家たちに着目された。土地の評価額を下げる目的で所有地にアパートを建て、それにより債務という形で銀行からの融資を受けることで、財産額を圧縮することができる。賃貸アパート建設は節税効果が高いと見なされ、2015年以降、需要が急増したと思われる。

こういった動きに関し、2017年4月23日付け日経新聞「アパート融資で建築業者から紹介手数料」では、一部の大手地方銀行が、収益モデルとして展開していることが報じられている。

地銀の持つ膨大な顧客情報が一役買う形に

銀行は大きく分けて都市銀行と地方銀行に分かれる。

都市銀行は東京・大阪に本部・本店を置き、国内各地に店舗を配置し、企業や個人から預かった資金を、大手上場企業を中心とした法人に融資している。

それに対し、地方銀行は、その名のごとく地方を地元とし、エリア中心に店舗を展開、地元企業や個人に金融サービスを届けている。これにより、顧客とのコミュニケーションが緊密になり、そこから集められる顧客情報は膨大なものとなる。地銀は、この情報を各店舗や本部で共有し、企業の経営支援から個人の資産運用サポートまで、それぞれの顧客に合わせた形で提案が可能となる。

日経新聞の記事によると、その顧客情報をもとに、地銀は節税ニーズのある顧客を建築業者に紹介、その見返りに手数料を受け取っていたことが金融庁の調べて分かったと報じられている。

このビジネスモデルを図に記すと、以下のような感じだろう。

金融庁の調べによると、地銀が受け取る手数料の割合は、建築請負金額の0.5~3%だという。仮に請負金額を7000万円として簡単に計算してみると、以下のようになる。

請負金額

手数料割合

地方銀行が受け取る
手数料

7000万円

0.5%

35万円

1%

70万円

3%

210万円

地銀が受け取る手数料は、建築費とは別の追加コストとなるわけだが、建築業者は事実上それを建築費に上乗せする形で提示し、顧客側に負担させることになる。

建築費  +  紹介手数料  =  建築請負金
(建築業者収益) (地銀収益)   (オーナー負担)

全てのオーナーの心理にしてみれば、少しでも安く建てたいと考えるのが当然であろう。しかし、地銀は顧客の情報を利用し、それを元に仲介手数料を建築業者から得ている。その手数料を支払うためのお金は、いきつくところ、情報を利用されたオーナー自身の懐から出ているのである。

利益相反が生じる懸念、そして当センターの懸念

日経の記事にも「利益相反が生じる懸念」とあるように、今回の地銀の収益モデルは、「公益」という考え方と対峙するだけでなく、銀行法第一条に記されている以下の目的と異なる振る舞いと思われても仕方がないだろう。

「第一条 この法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」

「公益」に関する参考文献:

原 丈人「「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉 (文春新書)

当センターの懸念は、地銀のこういった振る舞いだけでなく、空室率が問題となっているにも関わらず、相続税の圧縮を望むオーナーの気持ちを利用し、地銀がアパート建築を結果的に促している点である。

現在建築されているアパートの多くは、サブリース契約での建築がほとんどである。空室率が上昇している中、年数が経過し、契約の更新時期になると、オーナーと業者との間で一斉にトラブルが起こる可能性がある。(参考:時事通信「アパート融資の膨張警戒=建設過剰で空室増も―日銀」)

サブリース契約をされたオーナーの皆さまには、今一度契約書類の見直しをされることを薦める。

サブリース問題解決センターでは、以下の日時にて月例個別相談会を開催いたします。


日時:  2017年5月17日(水)13:00~17:00
形式:個別相談(上記のうち、40分間。事前予約をお願いします)
人数:4名様限定
料金:無料
場所:サブリース問題解決センター分室
(東京都中央区日本橋堀留町1-11-4 日本橋吉泉第2ビル5F)
お申し込みフォームはこちら>>>


今回のように、相続税対策として賃貸を建てられたオーナーの皆さまも、この機会をぜひご利用ください。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)