民泊新法(住宅宿泊事業法)から見えてくるもの

「サブリース民泊」の可能性 ~「家主不在型(投資型)」は大手不動産・建築・旅行関連企業が席巻か!?~

民泊サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)が、2017年1月に実施したホスト・ゲスト調査の結果を公表した。

それによると、昨年度のAirbnbコミュニティが経済活動により創出した利益は4,061億円であり、その経済効果は9,200億円に及ぶと推計される。一般的なAirbnbホストの年間貸し出し回数は89泊し、370万人以上のインバウンドゲストがAirbnbのリスティング(部屋)に宿泊した。1人あたりの平均宿泊日数は3~4泊となった。(Airbnb)

2020年を控え市場は益々活性化していくが、来年度施行予定(2018)の民泊新法(住宅宿泊事業法)の内容を見てみると、「家主居住型(ホームステイ型)」「家主不在型(投資型)」かによって規制内容の差が大きく出てきている。「家主居住型(ホームステイ型)」にとっては大幅な規制緩和となるが、「家主不在型(投資型)」はホストにとってはむしろ規制強化となり、コスパの面で大変厳しくなるのではないかと危惧する。

民泊新法では、住宅宿泊事業(民泊サービス)にかかわる者を

  • 「住宅宿泊事業者(民泊ホスト)」
  • 「住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)」
  • 「住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト運営会社)

の3つに分類し、それぞれに対して適切なルールを定める。

また、同法では「民泊サービス」

  • 「家主居住型(ホームステイ型)」
  • 「家主不在型(投資型)」

の2つに分類して適切な規制を課す。

家主不在型(投資型)は「住宅宿泊管理業者」に管理を委託

家主不在型(投資型)は騒音やゴミ出しでの近隣トラブルが発生する可能性が高いことから、都道府県知事への届出だけではなく「住宅宿泊管理業者」に管理を委託しなければならない。

「家主不在型(投資型)」のホストにとっては、チェックインの無人対応が許されなくなるため、2016年4月の旅館業法規制緩和よりも厳しいものとなる。必ず「住宅宿泊管理業者」に委託しなければならず、これは年間180日程度の営業制限と相まって収益上非常に大きな痛手となる。一般的な宿泊価格の家賃、代行手数料等を考慮すると黒字が出せなくなりそうだ。

日本政府は、家主不在型の民泊が問題を多くはらんでいることを深刻視しており、これを規制する意思を示している。また賃貸借契約やマンション管理規約の規制はそのままであるため、事業化に向けては茨の道のりが待っている。

「家主居住型(ホームステイ型)」で受け入れる民泊は基本的にはトラブルは少なく、また社会的意義も高いため、日本政府には容認され、庇護され続けている。

日本市場の7割以上のホストが「家主不在型」だ

海外の場合、9割以上が「家主居住型(ホームステイ型)」である一方、日本の場合は、7割以上が「家主不在型(投資型)」である。

家主の住んでいないお部屋を貸す変則的な「家主不在型(投資型)」ビジネスは、Airbnbの台頭とともにここ数年で急に出現したものだが、これは明らかに違法。旅館業法に反しているだけでなく、建築基準法、消防法に抵触してしまっているケースが多く、さらには、不動産オーナーがらみの賃貸借契約、マンションなどの管理規約にも反しているケースがもっぱらで、法令的に見てかなり悪質なビジネスとなっている。

また、大きな問題として、火災保険適用の問題がある。

家主であれ、転貸者にしろ、100%近い方が何らかの形で「火災保険」に加入している。この火災保険などには、「用途」によって「火災保険の料率」や「火災保険の補償内容」などがカテゴリーにより分かれている。ただ違法行為で民泊として建物を運用している時に、火災が起き場合「保険金が出ない」事が予測される。

「サブリース(転貸し)民泊」の可能性

原則的に、通常は、賃貸物件をさらに誰かに有償(転貸し)で貸すことは禁止されており、民泊形態であるか否かに関わらず、賃貸借契約違反で賃貸住宅オーナーから訴えられてしまう可能性は高い。

とはいえ、打診や交渉次第で許可を頂く場合もある。最近、若手起業家が民泊を事業として取組みたいと、一度に5~6戸を契約し、転貸しをしたいと仲介業者に物件紹介を依頼していると聞く。「住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)」に委託を前提としているが、条件が合えば家賃保証付き、いわゆる「サブリース(転貸し)民泊」も、新たなビジネスモデルとして可能だ。既に、そのケースに対応した家主に家賃保証をすべく保証制度(*)も出来ている。

*民泊サブリース家賃保証<新規参入民泊事業主(借主)専用家賃債務保証制度>

数多くの大手企業が民泊事業に参入

不動産関連、旅行関連や建設関連等の大企業が、ここ1年ほどの間に民泊事業への参入や買収を発表している。

  • 世界最大のホテル予約サイトExpediaが大手民泊サイトHomeawayを買収。
  • シノケングループおよびプロパストが民泊対応型サービスの提供を発表。
  • 不動産大手「大東建設」が民泊サポートサービス「民泊Gateway」を開始。
  • プレステージ・インターナショナルが民泊代行事業に参入。
  • 不動産事業を行うハウスドゥがイー・旅ネット・ドット・コムと業務提携を検討。
  • 株式会社インベスターズクラウドが民泊代行業者「tateru bnb」を開始。
  • マンション大手「大京」が民泊事業参入。
  • エイブルが合法民泊だけを扱う国産民泊仲介サイト「TOMARERU」と業務提携。
  • アパマンショップHDが民泊事業や中短期賃貸に参入。
  • 航空券予約サイトSkyticketを扱う株式会社アドベンチャーが、民泊事業に参入。
  • 不動産大手「大東建設」が民泊サポートサービス「民泊Gateway」を開始。等

アパマンの動きに見る、民泊の大規模事業の行く末

アパマンHDが打ち出したのは、民泊事業だけでなく、契約期間1~12カ月の中期賃貸事業、そして契約期間7~30日未満の短期賃貸事業も併せてのものだ。これらは、敷金礼金を無料にしたり、退去費用を無料にしたり、家具家電を設置したりといった抜本的な改革を含んでいる。

時代の流れは敷金礼金不要の中・短期賃貸に傾いている。

現在、シェアハウスという概念が台頭しはじめており、すでに敷金礼金を払わずに家具家電付きの物件を借りて暮らすスタイルが支持されている。

本来のAirbnb民泊は、シェアリングエコノミーの典型例なのだ。

外国人観光客ならびに外国人移住者の増加に伴い中・短期希望者が増えたことも相まって、新形態への参入の機運が盛り上がって行った。

これまで、外国人が不動産を賃借するのは、非常に難しいことだった。

外国人たちを、シェアハウスやAirbnbなど、制約の低い住居を選んで賄った、事実、これらのほうが、圧倒的にコストパフォーマンスが良いため、外国人・日本人問わず、不動産業界は徐々に顧客を失い始めている。従来のスタイルが通じなくなり始めている。

民泊を席巻してしまう可能性

アパマンHDなどの大手企業は、不動産資産や賃貸物件の管理方法等Know-Howの蓄積を豊富に持っているため、効率的な経営をしやすい強みがある。

これら企業は、1人の受付スタッフで数十の民泊部屋のチェックイン対応をこなしてしまえる可能性がある。これまで中小の投資家たちが1人1件の非効率的な人材登用で行っていた事業を1人数十件に対応出来ると、浮かせられる人件費は莫大であり、すると宿泊価格を大幅に下げることも可能なはずだ。

もし、効率化によって浮いたコストを宿泊価格の低下に還元するなら「家主不在型民泊(投機型)」は、大手企業が席巻してしまう可能性が出てくる。

欧米人にとってAirbnbはビジネス!?

世界192カ国、200万件以上の物件数、6,000万件以上の宿泊実績を超えるAirbnbは、欧米人にとって、「部屋貸しビジネス」ではなく、「ホームステイ体験の仲介所」つまり「交流の場所」なのだ。「ビジネスに参画している」という観念は低く、「ホームステイの場を提供している」だけ。そのため、宿泊価格は安く設けられており、「お小遣い程度の収入」で満足している。

彼らにとって、「ホームステイの交流」こそが、主目的であり、金銭収入が得られるかどうかは、大きな問題ではないようだ。

「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」は、日本独自の進化の可能性を秘める

交流こそが彼らの目的であるため、接客を肩代わりしてもらってまでして行なう「民泊代行業者」は海外にはほとんど存在しない。

ホスト各々が、自らの過去のペンション宿泊や友人もてなしの体験を参考に、部屋を作り、心からの「おもてなし」をしている。

ただ、日本では空家・空室問題を抱えている。その有効利用の側面もある。「住宅宿泊管理業」「住宅宿泊仲介業」は独自の進化の可能性も否定できない。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)