新中小企業金融円滑化法は必要か

~アパート経営破綻・債務出口戦略が見あたらない~
中小企業金融円滑化法、別名「モラトリアム法案」終了後の現状を検証

相続税対策などから収益性を軽視して始めたアパート経営では、借入金の返済に行き詰る事例が増えており、長期一括借上げ契約の中途解約を迫られるトラブルも目立つ。

90年代以降、土地の有効利用や相続税対策などからアパート経営が広がりをみせてきた。とこらが最近は、空室率の悪化や賃料の低下などから経営難に陥る事例が増えている。

以前は、平成25年で終了した金融円滑法(平成21年12月4日に施行され、平成25年3月末に期限)に救いを求めるアパート経営者も少なくなかった。

中小企業金融円滑化法、別名「モラトリアム法案」は、中小企業が返済条件等の変更の申込みを行なった場合、金融機関はできるだけ柔軟に対応するよう努力義務を定めた法律だ。

金融庁の発表によると,2013年3月末までの申し込み件数は436万9962件,金額は119兆6000億円に達し,そのうち認可件数は407万5064件,金額は112兆3490億円となり,認可率93.3%でした。東京商工リサーチによると,2012年9月末時点で普通法人および個人事業主の8.2%にあたる32万5430社がこの金融円滑化法の申請をおこなったといわれている。住宅金融支援機構でも、2012年3月時点で、アパートローンだけで1000億円を突破した。

人口減少が進む地方では、一段と厳しい経営環境に直面している。アパートの建材費に全国的な差異は殆どないが、東京と地方では家賃相場が倍以上も違う。マーケット性が乏しい場所にもたくさんサパートが建設されてきた。空室率や家賃相場の悪化により採算割れを起こしているケースがすくなくない。

借入返済金額がアパート収入を上回る逆ザヤ

センターの相談者2011年の事例で、「賃料の減額を受け入れてもらえなければ、契約を解除します」栃木県小山市に築18年のアパートもつAさんのもとに、レオパレス21が賃料の大幅減額を求めてきた。減額幅は33%。賃料の更新時期までに残り1年を残しているなかでの突然の通告だった。しかたなく大幅減額を受け入れた数ヵ月後、今度は別の担当者から突然、契約解除の申し出があった(レオパレス21終了プロジェクト)。経緯を説明し契約解除は免れたものの、契約解除は免れたものの、残る借入金は5000万円以上。このままアパート経営を続けても改善する見込みはない。デフォルトも視野に置かざるを得ない状況に追い込まれた。

平成25年3月31日に円滑化法は終了したが、当時、期限終了を控え、金融機関では円滑化法の「出口戦略」が最優先課題になっていた。だが、円滑化法を活用しているアパートローン債権に関しては、出口戦略を図ろうにも「手の打ちようがない」状態だった。

アパート経営では、基本的にアパート収入のみが返済原資となる。中小企業経営のようにバッド事業切り離したり、本業以外の収益を伸ばしたりといったことが出来ない。そもそも立地条件などから入居率が悪い物件は収益性の改善が見込みにくく、任意売却するにしても買手をみつけることは極めて難しい。最終的な処理手段として競売やタダ同然の金額でバルクセールに出す手もある、だが、競売は金融機関のレピュテーションリスクを伴うため現実的にむずかしい。バルクセールには金融機関の処理として全額相当の貸倒引当金の計上が必要となる。経営体力のない金融機関では、現状の賃料収入でキャシュフローが回るように条件変更して、要管理や破綻懸念先のまま放置するしか術はない。

1件当たりの貸出ロットが大きいアパートローンは、個人部門が貸出残高を伸ばすうえで、「格好の飛び道具」である。ところが、アパートビジネスという事業性ローンであるにもかかわらず、中小企業融資ほど厳格な審査にはなっていない。むしろ、業者との提携ローンによって、住宅ローンのような簡便な審査になっている。ほか、30年一括借上契約で安定収入が得られることを踏まえて与信判断している。

30年一括借上げが成り立つのは3大都市圏の一部などマーケット性のあるとこに限られる。「アパート経営は収益性こそが生命線」であることは間違いない。しかし、相続税対策などの節税効果を狙って、マーケット性のない地方でアパート経営に飛びつく土地所有者が少なくない。そうしたアパートの建設資金を地域金融機関が現在も貸し出しを続けている。

中小企業金融円滑化法が終了して3年が経過した。

この間、中小企業に対する融資状況は、どのように変化したのか、現状を検証すると、平成25年3月31日に円滑化法は終了したが、その後も金融庁から「貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めること」「貸付条件の変更等に努めること」が金融機関に求められ、中小企業を支援する姿勢には変化はなかった。これは、実質的な「延長」ともいえる。

このため、円滑化法の終了後もリスケ実行率は高い数字を維持している(図表1)。

<金融庁>
貸付条件の変更等の状況の推移(PDF:84KB)
※上記PDFのp2参照

しかし、アパート経営を取り巻く環境が厳しくなるなかで、特にアパート経営でリスケでもって将来リスクを排除できるものではない。アパートローンの途上管理、つまりリスク管理の重要性が増している。

アパートローン債権に関して出口戦略を図ろうにも「手の打ちようがない」状態だと認識すべきである。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)