地方銀行とCSR(企業の社会的責任)(4)~ 不動産融資は莫大な資金利益を生む〔ある地銀の例〕 ~

前回の地方銀行とCSR(企業の社会的責任)()では、金融機関の分類についてお話ししましたが、今回は銀行の収益構造について見てみたいと思います。

銀行の利益は、融資が収益の柱

行員は、均預金残高と平均融資残高を算出し、チェックしています。その時重視されるのは、平均融資残高とともに平均預金残高となります。理由として、平均預金残高が大きい程、実質金利が高くなり、それだけ銀行は利益〔儲け〕が上るからです。

銀行の利益は、銀行融資が収益の柱です。その内容は、資金利益と業務純益です。

 資金利益

資金利益とは、融資して儲かったお金から集めたコストを引いたものです。損益計算書を分解した中で、その収益構造の表にある項目の次の値になります。

資金利益:資金運用収益-資金調達費用

業務純益

業務純益は、銀行の本業の儲けを示す指標として使われます。

では、次に例を交えてみてみたいと思います。

1億円の不動産融資(寄宿舎建設)で、大よそ9千万円の資金利益(儲け)を生む構造

例えば、Aさんは次のような形で「寄宿舎」展開ビジネスでのサブリース契約をしたとします。

  • 千葉県在住
  • 30代、3人家族
  • 借入金:1億円〔土地・建物〕
  • 金 利:4.5%〔S地方銀行〕
  • 借入期間:30年
  • S・D社「寄宿舎」展開ビジネス(サブリース契約)

Aさんの平均融資残高が1億円で、融資金利が4.5%、平均預金残高が0円だった場合、Aさんは、1億円を金利4.5%で借り入れていたことになります。

一方銀行側は、平均融資残高1億円, 融資金利4.5%で計算された利息分を受け取っていたことになります。

まず、実質金利の計算式は次のとおりとなります。

実質金利=(融資額×融資利率-預金額×預金利率)÷(融資額-預金額)

預金金利を0.1%とすると、Aさんの実質金利は、

(1億円 × 4.5% - 0円 × 0.1%)÷(1億円-0円)=4.5%

と、融資金利と全く変わりません。

その場合、S地方銀行がAさんから受け取る融資利息は年間で次のようになります。

1億円 × 4.5%=450万円/年

その結果、銀行は、Aさんに1億円の融資を行って、年間で450万円の利息を稼ぐことになります。

30年ローンとしますと、元金は年々減っていきますが、シミュレートすると、S地方銀行は、1億円の融資で、大よそ9千万円の資金利益(儲け)をAさんから受け取ることになるのです。

その時、無論元本支払い(1億円)は別です。

中には借入金額3億円という事例も多数あります。その時、資金利益(儲け)として、おおよそ2億7千万円となります。

平均預金残高が大きい程、実質金利が高くなる

別の例として、Bさんは平均融資残高1億円、融資金利4.5%平均預金残高500万円だったとします。

この時、Bさんの実質平均融資残高は、平均融資残高1億円から平均預金残高500万円を引いた9,500万円になります。

この時のBさんの実質金利を見てみますと、次のようになります。

(1億円 × 4.5% - 500万円 × 0.1%) ÷ (1億円 - 500万円)= 4.73%

つまり、平均預金残高500万円とすると。実質金利が次のように上がるのがわかります。

4.5%(融資金利)  → 4.73%(実質金利)

このように、銀行は少しでも儲けて利益を出すために、平均融資残高とともに平均預金残高を高くするよう、注視しているのです。

銀行と言えども、「衡平の原則」が問われる!?

S地方銀行とある企業と協同で行っていると思われる「寄宿舎融資、金利4.5%事業モデル」の収益率はとても高いのですが、その事業の健全性・継続性の見極めと、地域社会への貢献のバランスを取ることが強く求められます。

この融資金利4.5%ですが、この金利だと、実質上、利回り11%程度がなければ、アパート経営では利益はでないと言われています。

東京都区内では、ほとんどが利回り5~6%以下であることを考慮すると、掘り出し物の物件は少ないと考えなければなりません。ましてや、このようなアパート融資金利では、よほど立地が良くなければ経営は成り立ちません。

S地方銀行はビジネスモデル製造責任者として、また、業務拡大の一翼を担っていると思われるので、万が一、このモデル破綻時には「衡平の原則」等で、事業の結果責任を問われ可能性もあるのではないでしょうか。

正にCSR(企業の社会的責任)の遵守が問いかけられると思います。(「地方銀行とCSR(企業の社会的責任)(5)」へと続きます。)

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)