借主に不利な承諾書に仕方なくサイン、撤回するには承諾書の有効性が重要

契約が終了し、家主立会いの上、原状回復のための修繕負担について同意しました。入居時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、仕方なくサインしたのですが、退去時に、借主に不利なことがたくさん書いてあったので撤回しようと思っています。この場合、撤回は可能でしょうか?

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承諾書そのものを一方的に撤回することはできません。

しかし、承諾書には、通常の原状回復義務を越えた特約事項が書かれていると思いますので、このような承諾書の有効性が問題となります。

判例によれば、このような承諾書(特約)が有効となるのは、

「特約の必要性があること」、
「借主が特約の意味を理解していること」、
「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」

などの事情がある場合に限られています。

まず、通常の原状回復義務を越えるような特約事項を結ぶための合理的な理由がなければ、「特約の必要性がある」とは言えません。例えば、家賃や礼金などの費用が、通常よりもはるかに安いような場合とか、通常の原状回復義務以上の責任がある代わりに、借主に特別に有利な規定が他にあるとかの事情がなければ、特約の必要性があるとはいえないのです。

その上、借主が入居時、「法律上の考え方からすれば、本当は家主が負担すべき費用だけど、借主に負担してもらうことになっているんです」というような説明を受けているようなケースもほとんどないでしょうし、「特約の意味を理解している」とは言えないでしょう。

結局、「署名捺印した」というだけの消極的な承諾のみ残っているわけです。

従って、入居時に、無理やり提出させられた「承諾書」そのものの有効性は認めがたいということになるのです。

さらに、2001年4月以降に交わした契約(承諾書)であれば、消費者契約法により、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定に反する可能性が高いので、消費者契約法に違反する可能性があります。

そこで、承諾書の撤回は無理ですが、承諾書の効力については、「認められない」として争うことが可能ですし、争えば、承諾書の効力が否定される判断が行われる可能性が高いでしょう。

「判例」の意味とは

厳密な意味では、裁判所が示した判断全てを「判例」と呼ぶわけではなく、「一定の法律 に関する解釈で、その法解釈が先例として、後に他の事件へ適用の可能性のあるもの」 のみを「判例」と呼ぶ。