住宅金融支援機構 賃貸住宅ローン100%融資の問題点 ~「長期事業収支計画書」はサブリース管理会社と連名で提出を~

当センターへの相談で、「住宅金融支援機構」を利用した融資の事案がありました。アパートやマンションの建築や建替えでローンを組む際、多くの場合は銀行からの借入れとなりますが、この機構の融資内容はどういったものなのかを見てみたいと思います。

審査されるのは「物件の収益性」

住宅金融支援機構のアパートローンは、正式には「賃貸住宅融資」と言います。

賃貸用のアパートやマンションの建築であれば、最大100%の資金を融資してくれるようです。マンション建替え時期でもあるため、建築業者もこの分野に営業をシフトしています。

このアパートローンは「物件の収益性」を審査されます

アパートローンであっても年収は審査の対象になりますが、ただし、「物件の収益性」は重要なポイントになるので、住宅ローンよりも審査のハードルは高いと言えるでしょう。

以下に、この機構の融資条件と、マンション建替え事業の内容をまとめました。

融資条件

融資率上限 対象事業費の100%
※ 融資額については100万円以上、10万円単位となります
融資金の返済期限 融資実行後35年以内(1年単位)
融資金の返済方法 元利均等返済または元金均等返済
返済原資の例 毎月の建物賃貸収入など

マンション建替え事業

次の1~3のすべてを満たす事業が対象となります。

  1. 新たに建設される建築物の地上階数が3階以上であること
  2. 新たに建設される建築物の敷地面積が300㎡以上(※)であること
    (※)マンション建替え円滑化法に基づく事業以外の事業の場合は、新たに建設される建築物の敷地面積が500m以上であること
  3. 建替え前の区分所有建築物が次の(a)および(b)に該当すること
    (a)区分所有法第62条第1項に基づく建替え決議、同法第69条第1項に基づく建替え承認決議、同法第70条第1項に基づく一括建替え決議、区分所有者全員の総意による建替え決議またはマンション建替え円滑化法第108条第1項に基づくマンション敷地売却決議を行っていること
    (b)「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定める耐用年数の3分の1以上を経過していること
    (例:鉄筋コンクリート造住宅の場合は16年以上経過していること)

「長期事業収支計画書」はサブリース管理会社と連名で提出を

ここで、「物件の収益性」が融資判断になる訳ですが、その基礎資料が「建設受注・管理一体型」建築請負業者作成の「長期事業収支計画書」です。これは子会社である賃貸借契約当事者の「サブリース管理会社」が担保すべきものです。

歳月とともに建物の老朽化が進むため、家賃の低下や空室率の増加が予想されます。また、10年単位で屋根や外壁の塗り替えなどの大きな修繕費用も発生します。向こう20年、30年の収支を計算して、それでも利益が出るかどうかを判断する必要があるのです。

実現不能なバラ色の計画書

これから物件を購入しようというオーナー様から、長期事業収支計画書の精査を依頼されることが多くありますが、アパート建設を決意させるため、かなりバラ色の計画になっていることがあります。

たとえば長期事業収支計画書を見て、以下のような傾向が見られる場合は注意が必要です。

  • 「家賃が相場より高い」
  • 「満室状態がずっと続く」
  • 「修繕費用が安い」

こういった甘い条件設定の収支計画書を鵜呑みにすると、最悪の場合収益どころか赤字になる恐れがありますが、当然ながら、一体不可分である賃貸借契約当事者の「サブリース管理会社」が担保すべきものです。

近時の住宅金融支援機構 賃貸住宅ローン利用事例ですが。〔センター相談事例〕

  • 近隣のワンルーム5万円前半(実勢)。一方、長期事業収支計画書では7万円台前半として設定
  • 常に満室状態のままの設定
  • 修繕費の計上が見当たらない

ちなみにこの事案では、「物件の収益性」を考慮し、土地実勢価格3倍強の融資内諾がされていました(数億円レベル)。申請者代理人のテクニックでしょうか、相当杜撰な計画でも審査が通るようです。

問題は、土地の担保価値を無視し、「物件の収益性」を第一とする以上、なおさら、「計画書」の信頼度が問われるわけです。

「サブリース契約」においてもオーナー側の支出となる費目

支出としては、ローン返済金と必要経費に分けられます。

このうち以下が必要経費となります。

  • 租税公課(固定資産税・都市計画税・事業税及び不動産取得税・登録免許税など)
  • 火災保険料
  • 修繕費(小修理・10年単位の大規模修繕)
  • 共用部分の光熱水道費
  • 管理費(管理会社に委託している場合)
  • 雑費(清掃費や消耗品代など)

これらは現金で支出されます。

まちづくり事業を行う場合に、事業の初動期から完了までの各段階の資金ニーズに対応するこの融資制度ですが、賃貸住宅市場の健全化の為にも、合理性のある「計画書」に基づいた判断を御願いしたいものです。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)

参考: