エアコン等の設備故障で家賃減額の義務化 ~ 改正民法は2020年をめどに施行される予定 ~

本年5月に成立した改正民法では、賃貸住宅ビジネスに関わる改正点が多くあります。

この改正民法は2020年をめどに施行される予定ですが、約120年ぶりに消費者契約に関するルールを定める債権部分が改正され、改正内容は約200項目にも及んでおり、事前に把握しておく必要があります。

今回は、設備の故障による家賃の減額や、借主による修繕が行なわれた際に貸主が費用負担することになるなど、家主と管理会社が知っておくべき内容をまとめました。

改正民法で賃貸業界に影響する内容

(1)住宅設備故障時の家賃減額(新法611条「賃借物の一部滅失による賃料の減額」)

例えば、トイレが使えないとか、エアコンが故障し使用できなくなった場合、それが借主の責任ではない時、賃料は使用できなくなった部分の割合に応じて減額しなくてはいけなくなります。

改正後は、入居者からの減額要求がない場合でも、故障して通常使用できない事実を知った時点で、適切な家賃減額をしなければなりません。ここが大きく異なるポイントですが、家賃減額については実務上の対応が難しいので、注意が必要です。

(2)借主による修繕費用を貸主が負担(新法607条の2「賃借人による修繕」)

賃貸物件の修繕が必要な場合に、貸主が賃貸物件に修繕が必要なことを知ったにもかかわらず、相当期間内に必要な修繕をしない時や、急迫の事情がある時は、借主が修繕を行い、その費用を貸主が負担しなければなりません。

どのような状態が急迫であるか、また修繕が必要な範囲が明確に定められているわけでありません。借主が相場より高い金額で修繕した時に、その差額の負担まで家主がすべきなのか、あらゆるケースが想定できるため画一的なルールを設ける事ができません。

自社のガイドラインを設け、その基準に沿って柔軟に判断することが求められます。

(3) 敷金の返済義務を定義(新法621条「賃借人の原状回復」)

通常の使用や経年劣化による損傷は貸主負担であると明文化されました。現在、国土交通省が出している原状回復のガイドラインの基準が法律で定められることになります。

判例での「通常使用」とは

  • 入居者が代わらなければ、取り替える必要がない程度
  • 入居者が代わらなければ、そのままにして置くような程度
  • 10年近く賃借していたことを考慮すると、時間の経過に伴って生じた自然の損耗

(「東京簡裁平成7年(ハ)第5584号」より)

契約上は特約を締結することで通常損耗も借主負担にすることもできますが、合理的な理由があり、契約時に借主が特約の内容を認識し負担をすることに同意していることが前提です。

つまり、経年変化や通常損耗に対する修繕義務を負担させる特約は可能ですが賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課することになるための次の「特別な事情」が必要になります。

「特別な事情」については国土交通省・ガイドラインでは、判例を分析した結果、次の3つの要件を揚げています。

  1. 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的・合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕費の義務を負うことについて認識していること。
  3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。(ただし、判例の動向は「通常の生活者」が「通常の使用」をしている時にこのような認識を持ち同意することは考えていません。)

「特別な事情」について、別の言い方をすれば、次のような例になります。(「伏見簡裁平成7年(ハ)第315号」より)

合理的理由: 相場に比べて家賃が極端に安い
十分に認識: 家賃の追加払いになるとの認識
意思表示をした: この合理性、必然性を認識しうべくして義務負担の意思表示

(4)個人保証の限度額を設ける(新法465条の2「個人根保証契約の保証人の責任」)

契約の際に、連帯保証人が金額をいくらまで保証するかの限度額を明記しなければなりまえせん。

まだ、明確に指針はありませんが、限度額の目安としては、契約期間の1期分にあたる家賃2年分までは、借主や保証人側にも納得してもらえるのではないでしょうか。

*   *   *

これらの改正点に伴い、契約書の内容の見直しが必要になってきますので、トラブルにならない契約書式を、早めに作っていくことが必須です。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)