【判例紹介】サブリース投資マンション: 不動産の価格、非現実的なシミュレーションを提示

買主は、売主業者の不利益事実の故意の不告知により、「誤認」して契約したものであるとして契約の取消しを認めた事例(東京地判 平24・3・27 ウエストロージャパン)(REITO)

消費者契約法による取消し

本事例は、不動産投資を勧められてマンション2室を購入した原告が、消費者契約法4条による取消しなどを求めた事案において、売主である宅建業者が、客観的な市場価格を提示していないことや非現実的なシミュレーションを提示したことなどが消費者契約法にいう不利益事実の不告知に該当するとされた事例です。

消費者契約法にいう不利益事実の不告知が認められたものとして、隣接地に3階建て建物が建つ計画があることを説明しなかった事例(東京地判平成18.8.30)など、周辺環境・近隣関係に関する事例はいくつか判示されているところですが、本件は不動産の価格について判示したものとして実務上参考になると思われます。

ポイント

宅地建物取引業法によるクーリング・オフ、手付解除のほか(宅地建物取引業法37条の2)、消費者契約法による取消が問題となります。(消費者契約法4条)

4つの対処方法

投資用マンションを購入してしまった場合の対処としては、主に次の4つが考えられます。(以下判例より)

  1. クーリング・オフ
  2. 手付解除
  3. 消費者契約法の取消1:強引な販売への困惑取消
  4. 消費者契約法の取消2:不実告知、不利益事実の不告知、断定的判断の提供の取消

不利益な事情を十分説明していない

投資マンションの売買については、以下のことを理由に、消費者契約法による取消を認めています。

「客観的な市場価格を提示していないこと、家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシミュレーションを提示し、原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他原告が物件1及び2についての不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかった」

不利益事実の不告知や不実告知に該当

例えば、家賃収入のシミュレーション等における、空き室となる可能性が全く無視された記載,空き室率の増大・家賃の下落・不動産価格の下落等について現在までの統計に反し,考えがたい前提がとられている記載,マンションの大規模修繕について全く考慮されていない記載は,不利益事実の不告知や不実告知に該当する場合があります。

消費者契約法が適用されるか

消費者契約法は、事業者と消費者との間の契約に適用されます。

「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいい、事業は、営利、非営利を問いません。(2条1項) また、事業とは、一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行をいうと解されます

例えば株の購入についても消費者契約法は適用されますので、投資用であるから消費者ではないと単純にはいえません。投資用マンションを電話勧誘をきっかけに初めて購入したような場合には、消費者に該当することが多いと考えられます。何棟もマンションを有してマンション経営を行っているという人であれば、消費者とはいえないでしょう。

参考:

宅地建物取引業法による強引な勧誘の禁止

宅地建物取引業法(以下、「法」という。)では、宅地建物取引業者に対し、契約の締結の勧誘をするに際して強引な勧誘を禁止しています。(参考:国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください」)

  1. 不確実な将来利益の断定的判断を提供する行為(法第47条の2第1項)
  2. 威迫する行為(法第47条の2第2項)
  3. 私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる行為(法施行規則第16条の12第1号のヘ)
  4. 勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行う行為(法施行規則第16条の12第1号のハ)
  5. 相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(法施行規則第16条の12第1号の二)
  6. 迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(法施行規則第16条の12第1号のホ)

宅地建物取引業者が上記の禁止に違反した場合、業務停止等の行政処分の対象になります。

宅地建物取引業法に違反したことが、直接、私法上の効果を生じるわけではありません。しかし、消費者契約法の困惑取消の参考となることもありえますので、宅地建物取引業法の処分を求めることも検討する必要があります。

なお、立証に際しては、当該マンションの価格や収益性について、不動産鑑定士による鑑定を検討する必要があります。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)