【サブリース経営】長期事業収支計画書(2)~ シミュレーションに修繕費用を ~

【サブリース経営】長期事業収支計画書(1)~ 家賃20%減額だと赤字転落 ~」では長期事業収支計画書に家賃下落率を含め、シミュレーションを試みました。ただ、長期にわたって運用するということは、建物のメンテナンスのための修繕費用がかかるということです。

今回は長期事業収支計画書のシミュレーション時に考慮すべき修繕費用について見てみたいと思います。

シミュレーションに修繕費用は必須

収支計画は、あくまで将来予測のシミュレーションです。何をいくらで設定するかで、将来の収支に大きく影響してきます。その時のポイントは、次の3つです。

  1. 賃料
  2. 空室率
  3. 修繕費

上記のうち、「3. 修繕費」については、ほとんどの場合がオーナー負担となりますが、ハウスメーカーから出される長期事業収支計画書には含まれていないことが多々あります。

建物は経年とともに必ず劣化します。外壁の塗装剥がれやコンクリートのひび割れ、雨漏り、配管の破損やエレベーターの故障などさまざまな不具合が生じます。その時の費用についてシミュレーションに含めておかないと、実際の運用が始まってから、思わぬ出費に驚くことになります。

分譲マンションでの「長期修繕計画」とは

分譲マンションには「長期修繕計画」と呼ばれるものがあります。なぜそういったものがあるかというと、大規模修繕や予算についてあらかじめ管理組合が計画を立て、予算を積み立てておく事が法律で義務付けられているからです。

大規模修繕の対象となる工事には、主に次のような項目があります。

大規模修繕項目

  • シーリング工事
  • 外壁塗装工事
  • 磁器タイル保護工事
  • 鉄部塗装工事
  • 屋上防水工事
  • バルコニー防水工事
  • 廊下防水工事
  • 階段防水工事 など

同様に、賃貸マンションに於いても月額積立金を収支計画に入れておかなければなりません。

マンションの規模にもよりますが、国土交通相の指針によると月額積立金(引当金)の相場は、約¥200-/㎡ とされています。高層住宅管理協会では30年間の大規模修繕の費用として、1平米あたり月額100円と算出しています。延べ床面積300平米の賃貸マンションなら、月あたり3万円の出費と考えることができます。

それらを考慮し、物件を30年保有するとなると、修繕に要する費用は次のような計算になります。

3万円 × 12カ月 × 30年 = 1,080万円

購入した物件について、大きな問題を発生させずに経営するためには、それだけの修繕費がかかると想定してシミュレーションすべきなのです。

新築物件の場合、瑕疵担保責任(品確法)

住宅の売買契約の実務では、売主が瑕疵担保責任を負う期間を2年などの短い期間に設定するのが通例となっていますが、事実上、このように非常に短い期間に限定されていることが、欠陥住宅問題の発生原因の一つであると考えられています。

そこで、2000年4月に品確法(住宅の品質確保促進法)が施行され、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第88条では、次のように規定されました。

新築住宅の売買契約においては、売主は、住宅の引き渡しの時から10年間にわたって、構造耐力上主要な部分等に関する瑕疵担保責任を必ず負う

これにより、新築物件については、10年間大きな不具合が保証されることになりました。

なお、上記の法律は、買い主が品質のよい住宅を手に入れられるようにすることと同時に、建築主側も法的に守ることを目的としています。

一気に赤字になるケース

新築物件の場合は瑕疵担保責任があるため、10年間は大きな不具合については保証されます。

問題は、中古物件を購入した場合です。

たとえば築20年の物件を購入する時には、その時点までにどれだけの修繕を行なってきたから物件の内覧時に積算する必要があります。

仮に購入時点までで200万円分の修繕しか行なっていなければ、以下の1,080万円-200万円=880万円分のリフォームが今後必要と考えるべきでしょう。

収支シミュレーションの中にこの費用を挿入すると、黒字だったはずが一気に赤字になることも有り得ます。

このように、時代によって変化する経営環境を見極めたうえで経営方針を軌道修正し、収支計画も見直す必要があります。毎年でなくても、数年に一度、収支計画を見直してみてはいかがでしょうか。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)

次回「【サブリース経営】長期事業収支計画書(3)」では、収支計画で意外に見落としがちなのですが、まず入居者の入れ替え時の原状回復費用、そしてクーラーや給湯器・ガステーブル、これら設備の寿命による取り替え費用などを見越しておく必要があります。この費用について指摘します。