【サブリース経営】長期事業収支計画書(1)~ 家賃20%減額だと赤字転落 ~

サブリース契約の際、ハウスメーカーからは長期事業収支計画書が出されますが、多くの場合、赤字での運用など決してないような収支計画が作られてきます。

ただ実際の運用に入り、ほとんどの物件で家賃のズレが生じてしまうのが実情のようです。その結果、ハウスメーカーからサブリースオーナーに減額請求が行くといったことが起こっているようです。

ではいったい、どのくらい減額されると収支が逆転しまうのか、シミュレーションを交えながら見てみたいと思います。

シミュレーションには家賃下落率を

物件が古くなるにつれて、どうしても魅力が下がってくるため、家賃は基本的には経年とともに下落します。また、近隣に競合物件が増えれば、競争優位性を保つ為に家賃を下げざるを得なくなる場合もあります。

そこで入居率と並んで、シミュレーションには家賃下落率をいれて考えなければなりません

ただし、入居率が物件の立地や状況によって変化するのと同じく、家賃の下落率も物件ごとに異なります。一概にどのくらいの下落率になるのかを予測するのは難しいのですが、一般的に、入居者が入れ替わるごとに下落するという傾向にあるようです。

年間2%の下落なら10年後には赤字に転落

例えば、次のようなサブリース契約を予定しているとします。

  • 借入7千万円
  • 35年ローン
  • 8戸(1R)@55,000円

きちんとシミユレーションを組むなら「年間2%」など、立地特性などを加味した一定の下落率を設定した収支を計算してみるべきでしょう。もしくは、賃料を下げない想定とする場合は、リフォーム代や募集費用などを積み立てることを想定したシミュレーションを組む必要がでてきます。

ここでは、わかりやすくするため、年間2%の下落率で設定し、収支がどう変わるのかを計算してみます。すると、家賃下落がない場合と2%の下落率の場合は、次のようになります(ここでは税金は考慮していません)。

家賃下落率による収支シミユレーション

家賃下落なし 家賃下落率2%/年
初年度収入 44万円/月 44万円/月
10年後の家賃収入 44万円/月 36.3万円/月(▲17.5%
経費 15万円/月 15万円/月
ローン返済(元利均等) 25万円/月 25万円/月
初年度の収益
(初年度収入ー経費ーローン返済)×12ヵ月
48万円 48万円
10年後の収益
(10年後の家賃収入ー経費ーローン返済)×12ヵ月
48万円 -44.4万円

(サブリース問題解決センター試算)

初年度の家賃収入は、家賃下落があるなしに関わらず月額44万円あります。そこからローンの返済や経費を差引くと、年間の損益はプラス48万円となります。

ところが10年たつと、事情はガラリと変わります。

家賃下落がない場合は、10年経っても家賃収入は当然変わらず、プラス48万円となります。

一方、家賃下落率を毎年2%に設定した場合、10年後の家賃収入は36.3万円(▲17.5%)となります。そこからローンの支払い25万円と経費15万円を差引くと、年間44.4万円の赤字になってしまいます。つまり、オーナーは、自分の資産を取り崩したり本業の利益を回したりして、年間44.4万円の赤字分を埋めなければならないのです。

このことから、金融機関に提出した収支計画書にある家賃から20%減額されると、忽ち赤字に転落することが想定されます。

融資銀行との三者協議が必要

当たり前の話ですが、家賃が下がれば、ローンの返済は厳しくなります。家賃が2割下落すると、ほとんどの場合、収支はトントン、またはシミュレーションのように赤字になってしまう場合があります。急激に下がり過ぎれば、そもそもローンの返済が滞ることすらあり得るのです。

不動産投資のリスクを想定し、資金計画を立てる上で、家賃の下落率は非常に重要な項目です。赤字で返済に困る状況は、融資銀行も同様なのですから、銀行に声を掛け、三者協議に持ち込むことが大切です。

銀行にとってアパートローンはドル箱

ハウスメーカーから提出される長期収支計画書において、新築物件ならば建てた時から、中古物件ならば購入した時からずっと同じ家賃で経営できるものとしてシミュレーションが組まれている場合が多くあります。

このような計画書では、収益の予想を立てる上で、まったく参考になりません。

一方で、銀行の融資担当者は、提出されたシミュレーションに、家賃下落率が算入されていないことは判っています。

これは、特にマイナス金利の影響もあり、融資先が無く、アパートローンは正にドル箱・・・これが理由です。

とは言え、銀行側も「貸手責任」を逃れるわけには行きません。

融資する側として、法令を遵守しつつ常識的・良識的に業務を遂行していなければ、「貸手責任」に問われるのではないでしょうか。

例えばリノベで物件価値を高める

適切なリフォームをして物件の魅力を保てば、下落率を低めに抑えることは可能です。ただ、「歳月を経てもまったく下がらない」ということは、住居系の賃貸物件ではありえません。

最近はアパート・リノベの情報サイトも多く有りますので、オーナーの方は参考にしてみてはどうでしょうか。(参考例:ひかリノベ

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)