「民法大改正」敷金は原則返還(敷金ルール明文化)

約120年ぶりの大改正

民法改正案が4月14日の衆議院本会議で可決した。民法が定める企業や消費者の契約に関するルールが明治時代の制定以来、約120年ぶりに大改正となる。債権関係規定(債権法)を見直すもので、消費者保護にも軸足を置いた改正だが、具体的にどのように変わるのか、以下に検証する。

民法に明記したことの狙い

法制審議会・民法部会(債権関係)は、消費者や企業の契約ルールを定める債権関係規定の民法改正案をまとめた。そのポイントは、賃貸借規定の賃貸借終了後の収去義務および原状回復義務において、敷金の返還や賃借人が経年変化による物件の原状回復義務を負わないルールを明確にしたことである。

判例などによるルールはすでに形成されていたが、民法に明記されたのは今回が初めとなり、退去時に発生するトラブルを防ぐことが狙いと思われる。

退去時にトラブルが発生する5つの要因

国民生活センターによると敷金や原状回復についての相談件数は、2015年度で1万4211件も寄せられているという。では、こうした賃貸住宅トラブルがなぜ発生するのであろうか。

第一に、賃借人に修繕義務を課する特約が、民法の修繕義務の規定(民法606条)が任意規定であるため、契約の自由の原則から認められている。そのため、賃貸借契約書のなかで、通常使用に伴う損耗・自然損耗を賃借人負担と明示する特約、いわゆる「原状回復費用特約」をうたう契約書が未だに存在し、トラブルの原因となっている。

第二に、賃貸人に有利につくられる契約条項の問題がある。賃貸人には、貸主有利の契約条項や曖昧な例文的条項が記載された契約書に基づく契約締結の欲求があり、ともすれば賃借人にこれら貸主有利の条項を押し付けがちだ。こうした条項が賃貸借終了時に問題を発生させることになる。

第三は、賃貸借契約に関する契約当事者の誤解や思い込みから生じるトラブルだ。賃貸人は独自の解釈や契約書で契約を迫り、賃借人もまた独自の思い込みや解釈で契約書に押印するという日本人特有の曖昧さと思い込みから生じるトラブルともいえる。

第四は、賃借人の泣き寝入り体質が賃貸住宅トラブルの予防と救済を遅らせてしまっていることである。

第五に、いわゆる少額消費者事件の問題がある。そもそも賃貸住宅トラブルは、争いとなる金額が少額であることもあって、裁判費用や弁護士費用をかけてまで裁判に訴えたり、弁護士に依頼しようとする人が少ないのが現状だ。

消費者にとってわかりやすい敷金ルールが明文化

このような状況において、今回の改正は、消費者保護に軸足を置いた大きな見直しといえる。敷金トラブル解決の指針として「借主は通常の使用による傷みや汚れ、経年変化については、原状回復の義務は負わない」という新たな敷金ルールが明文化されることになる。消費者にとってもわかりやすいルールが示されることになり、トラブルが減少すると予想される。

大谷昭二(日本不動産総合研究所所長)
(サブリース問題解決センター長)